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高校受験や大学受験の勉強法は資格試験では通用しない? 受験のプロが詳しく解説します

著者近影
KOHEI

こんにちは!ブランディンググループKOHEIです。
教育学部を卒業後、受験業界で教職員と広報制作の職をあわせて12年ほど経験してきました。
受け持った生徒数は400名、インタビューした難関校合格者数は100名を超えます。


集団指導、映像授業、スマホ授業、個別指導と、ありとあらゆる学習形態のサービスを扱ってきたので、勉強方法には異様に詳しいと自負しております。
今回はこの経験・知識を活かして、資格の勉強をする際に役立つ記事を書いてみたいと思います!

受験勉強の方法は資格試験でも通用する?

資格試験の勉強に取り組むにあたり、もっとも頭を悩ませるのが勉強方法だと思います。

・ツールは何を使うか。
・メインで使うのは参考書か問題集か、あるいはアプリか。
・インプットの手段は動画か本か。
・問題演習は単元ごとにやるのか、全範囲一気にやるのか。

そこで判断材料になるのが合格者の体験談や口コミレビューと、ご自身の過去の勉強経験です。

高校受験や大学受験、あるいは中間テストや期末テスト、資格試験の勉強でうまくいったことや失敗したことはとても重要な判断材料になりますよね。

この記事ではそんな「ご自身の過去の勉強経験」について、理解を深めていただきます。

結果的にどのような学習方法を選択するにせよ、教材費代と学習時間を費やすわけですから失敗は避けたいですよね。

ぜひ勉強開始前の参考にしていただければと思います。

※この記事では「資格試験の内容を丁寧に理解したい人」と「とにかく試験に最短で合格したい人」の2パターンがいることを意識したうえで語っていきます!

ではいく🦒

【試験範囲の違い】資格試験の勉強と受験勉強の決定的な違いはこれ

勉強と聞いてまず、「受験勉強」を思い浮かべた方も多かったのではないでしょうか。
しかし、受験勉強の成功体験を資格試験の勉強に重ねるのは危険です。

理由は色々あるのですが、一番は「学習量」の差が桁違いだから。

高校受験や大学受験の出題範囲はそれぞれ3年分です。勉強期間は半年~1年以上が一般的ですし、「受験生」という特殊な「職業」になって、生活のほとんどを勉強にあてます。

平日3~5時間、土日は8~10時間やります。この生活を1年続けた場合、なんと約1500時間も勉強することに。

一方で基本情報や応用情報、AWS認定資格などを取得する場合、働きながら2週間~3カ月程度で合格するのが一般的です。

合格者のレポートを見る限り、集中的に取り組んだ場合でも平日2時間、土日8時間くらいが一般的のようです。2週間なら50時間、1カ月なら100時間。

個人差が大きいので一概には言えませんが、受験勉強の数十分の一の勉強量ということになります。

これだけ勉強量が違うと、勉強方法も大きく異なってきます。

受験勉強と同じアプローチで勉強すると、おそらく「準備しすぎ」になります。

定期テストと資格試験の勉強法は共通点が多い?

こっちは逆にかなり近いと思います。試験範囲の広さや学習期間など、同じくらいと言えなくもない。

では、定期テストの時のような勉強法が適切かと言うと……。

ここで意識したいのが「勉強する目的」です。
テストを乗り切ることだけが目的だと、一夜漬けスタイルのような短期詰込み型になり、テスト後すぐに忘れてしまいます。

一方で数年後の受験も見据えて勉強していた場合は、短期詰込み方にはならないので、テスト後も記憶が維持されたことでしょう。

資格が欲しいだけなら、定期テスト一夜漬けの方みたいに短期で詰め込んでもいいと思いますし、学んだ知識を末永く維持したいなら、短期決戦すべきではありません。

【インプットの違い】理解してから問題演習か、問題演習しながら理解か

高校受験や大学受験は、まず丁寧なインプットがあって、その後に問題演習でした。

数学の授業を思い出してほしいのですが、公式や定理について、授業でしっかりと説明があって、その後に習った公式を使って簡単な問題を解く。

それができたら、次は少し難しい問題を解き、宿題として問題集の応用問題を指定される。そんな流れだったのではないでしょうか。

一方で、資格試験の勉強法は最低限のインプットの後にいきなり過去問演習という流れが定番です。

インプットされた情報だけで正答にたどり着くことは不可能。

解説を読んで理解していく前提の構成になっています。

すでに資格試験の勉強をしたことがある方ならわかると思いますが、1周目や2周目の演習がとにかくキツイんですよね。

わかるわけがない問題を解き、正解以外も含めた全解説をじっくり読んでいかないといけないから。不正解が続くうえに進みが遅い。

勉強をやめたくなります。

なぜこんな苦しい学習方法が一般的なのでしょうか。その理由がこの後の話に繋がってきます。
が、その前に前提知識としてエビングハウスの忘却曲線の話をさせてください。

エビングハウスの忘却曲線は資格試験でも重要か?

あまりにも有名な理論なので名前くらいは聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

画像:イラストAC

参考記事:https://smbiz.asahi.com/article/14828411

人は一度学んで記憶した内容を1時間後に約半分忘れ、1日後に3/4忘れます。

そこで、

①忘れないために定期的に復習をすることで、知識を定着させる

②復習の回数を重ねるごとに復習に費やす時間が減っていく

ということを実験結果をもとに説明した理論です。

日本史や世界史の知識を覚えるために、指導者から「授業当日、翌日、3日後、1週間後、2週間後に復習しよう」と言われたり、あるいは自発的にそのように復習していた経験はありませんか?

それです。

逆に定期的な復習をしなかった方は、記憶が定着せず苦労したのではないでしょうか。

受験勉強では何よりも重要なこの理論が…なんと資格試験では重要度がガクッと下がるのです。

【暗記方法の違い】資格試験はアウトプットしながら覚えるもの(らしい)

数年前に妻がITパスポート取得に挑戦することになったときのことです。

一緒に参考書を選んだうえで以下のようなアドバイスをしました。

「単元ごとに、今日読んだ所を明日も読み直して、三日後と一週間後も復習するべし。復習を繰り返すうちに理解も深まるし、見慣れてくるから復習自体すぐ済むようになるよ」

「受験日まで何度も何度も復習し続けて完璧に理解して覚えきったら勝ちだ」

「過去問演習は試験前の点検みたいなもの」

しかし、それは誤りでした。

妻は途中で見つけた過去問道場という、過去問がランダムに出題されてスマホで回答できるアプリにハマり、毎日の通勤途中にそのアプリを使って問題演習を繰り返し、テキストはほぼ見返すことなく試験に合格しました。

とはいえ、こんなN=1の事例で意見が変わる私ではありません。

持論が崩れたのか? という動揺を隠しつつ、色々な合格体験記や他の資格の事例、出回っている学習ツールなどを調べた結果、以下の結論にたどり着いたのです。

まず、Web上で受けるCBT型が多いので、資格試験は選択式問題が主です。

大体四択なので消去法でも解けるし、難易度の高い引っかけの選択肢もない。

完璧に記憶・理解していないと書けないような記述論述問題は出ないので、なんとなくわかっていれば正解できる。

次に、問題の出題パターンがある程度限られている。

運転免許の試験を思い出すとわかりやすいと思うのですが、聞かれ方のパターンがある程度限定されており、解きまくることで、同じor見覚えのある問題ばかりという状態に持っていくことができる。

そして、試験範囲が受験勉強より狭いので、復習し続けないと維持できない記憶量ではない。

問題演習をしながら全範囲に触れることで、ある程度記憶は維持できるし、それで合格できる。

以上の理由から演習問題を解きまくっていれば、合格ラインを突破できるようになっており、最初に丁寧なインプットをしなくても何とかなる(1周目が苦しいけど)し、忘却曲線を意識した復習を繰り返す重要性も低くなっていたのです。

※そうは言っても、もちろん初めて読んだページを翌日見直すといった工夫はすべきです。あくまでも復習の比重が下がる、という話になります。

【授業の受け方の違い】講座によるインプットは予備校型ではなくスタサプ型で

問題演習が中心の資格試験ですが、さすがにインプットが全くない状態で問題演習に進むことはありません。インプットの手段は本か講座(主に動画形式)が考えられます。

それぞれ見ていきます。

まず、講座での学び方には2種類あります。

①高校受験で通った地元の塾の集団授業、あるいは駿台や河合塾の集団授業のように、授業を受けてから次の回まで1週間あくスタイルです。

次回までに、習った内容の復習や暗記を済ませます。動画で学ぶ東進や河合塾マナビスの場合、週2~3コマ詰め込んだ方もいるかもしれませんが、大きい区分ではこちらに属します。

②スタディサプリなどの定額受け放題の動画サービスです。

毎日1コマ見るとか、1週間で全コマ一気見するとか、復習を軽視してでもまず一度全範囲受講する方が多いです。

「全範囲を一応知っている状態」にして、早く問題集を回したい人が好む方法です。

一カ月で受けたい講座を全部受ければ、その期間の費用だけで済むという金銭的なメリットもあります。
資格試験は問題演習に重きをおくので、スタサプ型を推奨します。

実際、Udemyの講座なども1.5倍速再生で一気に見終えたといったレビューが多かったです。

予備校の受講スタイルは一度忘れると良いかもしれません。

本でインプットする場合、一気に最後まで読む?

本でインプットする場合、必ず悩むのが「最後のページまで一気に読み進めるべきか、(エビングハウス理論を意識して)復習を挟みながら進めるのか」です。

(問題演習中心なんだから前者でしょというツッコミは少々お待ちください)

この話をするうえで触れておきたいのが英単語帳の覚え方です

英単語約2,000語の覚え方

英単語帳一冊分の1,800~2,000語は、正しいやり方をすれば1~2週間で習得できますが、誤ったやり方をしていると半年以上かかります。

東進は高速基礎マスターシリーズと言う自動で正しいやり方になるように設計されたアプリを開発しており、これを使うと苦労することなく全部覚えることができます。

気になる中身はと言うと(各教室のブログなどでも公開されているので機密情報ではないと断りを入れたうえで)、

100単語ごとにクイズ形式で出題されるようになっており、全問正解になるまで繰り返し解いて、全問正解(完全習得)したら、次の100単語に進むというシステムです。

完全習得した後も定期的に総復習して記憶を維持します。

紙の英単語帳を覚える場合も同じで、最初は50単語や100単語ずつ集中的に覚えて、全部一度覚えたら、その後は定期的に全単語を見直すのです(そこで間違えた単語に印をつけて、印有の単語だけ再度復習とか)。

この単語帳暗記で上手くいった方は、資格試験の勉強でも一単元ずつ理解していく(覚えていく)べきと考えるかもしれません。

チャート式の使い方

「英単語は覚えるだけ。理解が伴う試験勉強とは違うだろう」という指摘に備えて、数学のチャート式を使った勉強法も挙げてみます。

この場合も全単元一気に読むという方法は考えにくく、当然一単元ごとにやりこんで習得していくのが一般的です。

このような方法で受験勉強で成功体験を積んでいると、資格試験でも転用したくなるものだと思います。

資格試験では一気に読み進めてよい

資格試験は受験勉強と異なり、過去問演習を通じて暗記していくし、解説を読むことで理解を深めていくスタイルが一般的です。

ですので、復習や理解を軽視してでも一気に全ページ読んで、そのあとすぐに問題演習に進んで良いと思います。

単元ごとにじっくり理解を深めるやり方が間違っているわけではありませんが、合格への最短ルートではありません。

受験勉強と同じ勉強方法をとった場合、冒頭でも申し上げた通り「準備しすぎ」になるのです。

残された疑問

軽めにインプットしたら、すぐに過去問演習に入り、繰り返すことで暗記し、解説を読みながら理解を深めていけば良い。

ということまでは分かりました。でもまだ疑問が残ります。

・解説を読んでも理解できない場合は、完璧に理解するまで調べたほうがいいのか?

・毎回解説読まないとダメ? 何周も繰り返してるし正解だったら解説飛ばしたいんだけど

・正解以外の選択肢がなぜ該当しないか、理由も言えるようにしないとダメ?

このあたりは、試験ごとや目的ごとに違うと思いますので、合格者たちにインタビューをしながら明らかにしていきたいと思います!!

まとめ

いざ書き始めてみると、語りたいことが溢れだしてきて、かなりの大ボリュームになってしまいました(汗)。しかもまとまりがない……。

でも、受験勉強やテスト勉強との違いや、転用できるか否かについて、最低限の観点はお伝え出来たと思います!

高校受験や大学受験で大成功をおさめた人ほど、「今回の授業(単元)を完璧にしてから次の回(単元)へ」という丁寧な勉強方法に自信と愛着を持っていると思いますが、どうやらそれは忘れたほうが良さそうです。

とても悲しく悔しい現実ですけどね。

ちなみに妻はITパスポート取得のために覚えた内容を、今はほとんど覚えていません。
でも、「取得することが目的」と割り切っていたから、それでいいそうです。
受かるための勉強か、知識を得るための勉強なのかも重要な観点ですね。

ちなみにこの点については、AWS認定資格12冠者のAKIHISAさんからは、「資格試験は脳の引き出しを増やす行為だと思っています」とのご意見をいただきました。

資格試験を通して一度知っておけば、詳細は忘れていても概要は覚えているので、業務をするうえで色々な選択肢を検討する際の材料になる。詳細は忘れていたとしても調べれば良いということだそうです。大変参考になる意見でした。

なお、今回の企画はこれで終わりではありません。

これから基本情報技術者試験や応用情報技術者試験、CLFやSAA(AWS認定資格)などに合格した方たちのインタビュー記事を随時公開していく予定です。

ご自身のこれまでの勉強経験と資格試験の勉強は「どこが同じでどこが違ったか」についても深ぼっていきます。

受験のプロの視点で、「そのやり方だとここで苦戦しませんでしたか?」なんて鋭い切込みもバンバン入れていきます!

IT資格の合格者レポート企画をお楽しみに!

この記事を書いた人

著者近影

KOHEI

ALH株式会社 採用戦略部 ブランディングチーム所属。
進学情報誌の編集者→検索サイトの編集者・ライター・ちょっとWebディレクター

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