カルチャー

【人間を知る旅】 「葬送のフリーレン」の深遠なる世界から見る

著者近影
SHINGO

こんにちは。DSU所属のSHINGOです。

きっかけがどうであれ、私たちは様々な媒体から多かれ少なかれ影響を受けることがありますよね。
それがある時は映画であったり、ある時は音楽、またある時は書籍であるかもしれません。
今回紹介する「葬送のフリーレン」も、私たちの考え方や生き方そのものが、根底から覆されたり、心が揺さぶられる、そういった体験ができる作品になっています。

葬送のフリーレン(1) 原作:山田鐘人 作画:アベツカサ

※「FREE PREVIEW」はAmazonアプリをインストールしていない方は、ご覧になることができません。
【あらすじ】
魔王を倒した勇者一行の魔法使い・フリーレン。彼女はエルフで長生き。勇者・ヒンメルの死に何故自分がこんなにも悲しむのかわからず、人を“知る”旅に出る。僧侶・ハイターの葬送を機に、ハイターが育てていた少女・フェルンと魔法使いの二人旅へ。途中、戦士アイゼンの弟子・シュタルク、若き僧侶・ザインの二人も加わり、四人それぞれの目的をはたすべく、長い旅は続く…
(引用:WEBサンデー)

はじめに

葬送のフリーレンは、コロナ禍の昨年春頃から連載が開始され、最新刊の第4巻が発売された今年3月時点で累計200万部を超える大ヒットとなりました。それを証明するかのようにマンガ大賞2021の大賞を受賞したのは記憶に新しいかと思います。

単行本が発売されてから、なんとなく気にはなっていたのですが、実際に私がこの作品を読んだのはつい最近のことです。

今回、「新人育成」についての話をふまえてみなさんにお伝えしようと思います。
少しでも作品理解につながったり、これから読者となろうとしている方の道しるべになればとても嬉しいですね。

前置きが長くなりましたが、作品の紹介に移りましょう。
ここからは作品の魅力について、私の感じたことを書いてみようと思います。

ここからネタバレを含みます。
出版元のサンデーを始めとする多くのサイト上に無料(1・2話)で提供されています。
話の理解が深まるので一読されることをオススメします。

※2021年4月現在

ファンタジー世界に垣間見える現実世界

まず初めに、簡単に登場人物を紹介します。

フリーレン(エルフ) : 本作の主人公。魔王を倒した勇者一行の魔法使い。
ヒンメル(人間) : 勇者一行の勇者。
ハイター(人間) : 勇者一行の僧侶。
アイゼン(ドワーフ) : 勇者一行の戦士。

第1話では10年の年月を共にした勇者様一行のストーリーと、フリーレンがなぜ再び旅立つことになったのか、その経緯が描かれています。
勇者パーティのメンバーは勇者ヒンメル、戦士アイゼン、僧侶ハイター、そして主人公の魔法使いフリーレンの4人でした。
すでにファンサイトなどにも紹介されていますが、登場する魔物の名前も含めて基本的にはドイツ語の名称となっており、「フリーレン = 凍える」、「ヒンメル = 天国」、「ハイター = 明るい」、「アイゼン = 鉄」に該当し、まさにその通りの性格を備えたキャラクターとなっています。

登場するキャラクターからして、王道の冒険ファンタジーを想像する人も多いかと思いますが、少し異なります。
「葬送のフリーレン」は人間の感情を理解をすることも、興味を持つこともなかったエルフで魔法使いのフリーレンが、ある出来事をきっかけに、過去を回想しながら、人間を知る旅に出るというストーリーで、ファンタジー作品の中でも少々珍しい後日譚(アフター)ファンタジーです。

エルフであり長寿種であるフリーレンにとって、人間の50年は瞬きするくらいの時間の感覚でしかありません。

▼次の約束を50年後と、「また明日遊ぼう」並に口にしたり。

(出典:葬送のフリーレン 1巻)

▼「ちょっと旅してくるね」の規模が100年単位だったり。

(出典:葬送のフリーレン 1巻)

そんなフリーレンにとって、魔王討伐までの10年はあっという間の短い出来事でした。

(出典:葬送のフリーレン 1巻)

物語の最大の特徴として、回想シーンが非常に多いことが真っ先に挙げられます。
それは後日譚ファンタジーあることと関連していて、描かれていない魔王討伐の10年間に起こった出来事が関係してきます。

私たちは日々の生活・仕事・遊びには必ず誰かしらが関わっていることを知っています。
当たり前の話ですが、最低限の人間関係を築かない限り、生活も仕事も遊びもままならないのは言うまでもないですよね。
分野を問わず、どんなにスペックが高い人間だとしても、他人と関わらない生涯というのはあり得なく、少なからず誰かからの影響を受けつつ、人生を歩んでいくわけです。

▼回想シーン

(出典:葬送のフリーレン 1巻)

フリーレンのように、かつて仲間と共に過ごした時間の中で、様々な場面における会話や言動を思い出し、その時の意味を改めて自問しつつ、人(エルフ)として日々成長していくその姿が大人になった私が読んでも何か心に響くものがありました。
もちろん彼らと生きている世界も、抱えている問題も、また降りかかってくる困難も、大半のことが全く違います。
そんなファンタジーな世界の中にもフリーレンの成長と一緒に、読者は今までの人生を振り返って、どんなに多くのことに気づかずに過ごしたか考えさせられます。
また、人間味溢れる数多くの登場人物たちとの交流は私たちの生き写しそのもののように感じます。
これらが、世代・性別などを超えて共感を生み、多くのファンを獲得するに至ったのではないでしょうか。

お互いをよく知ることと新人育成

冒頭で"ある出来事"をきっかけにと書きました。
その出来事が勇者ヒンメルの死です。魔王討伐から50年間、フリーレンはヒンメルとは会うことがなかったのですが、その死の直前に、待望の再会を果たすことになります。
ここで重要なのは、この特別な再会はあくまでもヒンメル側の気持ちであって、フリーレンには「たったの50年」ぶりの再会でしかありませんでした。


(出典:葬送のフリーレン 1巻)

この事実がヒンメルの葬式の場で露見して、哀悼の意を全く見せないフリーレンは、稀代の英雄の死を心から悼む人々の不興を買うことになります。
そして「たったの10年」発言で弁解しつつも、ヒンメル(人間)のことを「なんでもっとよく知ろうと思わなかったんだろう」と後悔して、ヒンメルたちとの足跡を再び辿る旅に出ることになるのです。
ここから物語が本当の意味でスタートします。

(出典:葬送のフリーレン 1巻)

葬送のフリーレンを通して、仕事における新人育成のための正しい方法の投資とはお互いをよく知ることに尽きる、と感じました。

私たちは仕事でもプライベートでも、様々な人との”すれ違い”を少なからず経験していると思います。
すれ違いがなくならない理由はお互いをよく知ることのハードルが想像以上に高いからです。
自分をよく知ってもらうためには、包み隠さずありのままでいる必要があります。
しかし大人というのは難儀な生き物で、プライドが邪魔をして、仮面のままであることが数知れないのは身をもってご存じでしょう。
さらに両者が双方向的(=心が通い合う状態)である必要があります。一見うまくいっているように見えても、片方が仮面であれば結果は一方通行となり、全く意味を成しません。

新人の求める目標や結果は何なのか、逆に上司や経営者が新人に求めているのは何なのか、そのギャップが少ないことが、新人教育に成功したと言えるのではないでしょうか。

人間の身体の成長は20歳で止まってしまいますが、心の成長に終点や限界はありません。生涯にわたって成長することが可能だし、そうあるべきです。
そのためには私たちもフリーレンのように、人間を知る旅に出かけて、自分自身と他人について深く理解する、それが最善な方法なのではないでしょうか。
その成果が仕事にもプライベートにも結びつけば、たとえ挫折するようなことが時折あったとしても、豊かな人生につながっていくと思います。

▼私も臨終の間際にヒンメルの最高にクールなセリフを語ってみたい!


(出典:葬送のフリーレン 1巻)


最後に

葬送のフリーレンを通じて、私は「新人育成」について感じたことをお話しましたが、この物語は読み手によって共感する場面は様々だと思います。
ぜひ、このゴールデンウィーク中に読んでみてはいかがでしょうか?

まだまだ話したいことが尽きないのですが、これぐらいにしておきましょう。
近い将来、深遠なる「葬送のフリーレン」の世界を、共に語らう機会を心から待ち望んで。

この記事を書いた人

著者近影

SHINGO

ALH株式会社 Development Scale Unit (通称:DSU)所属。
エンジニアとして所属しながら、細々と社内の自動化を進めている。(チームRPA)
月2~3本の映画鑑賞(ほぼ洋画)がコロナ禍で激減したのをきっかけに、最近海外ドラマにはまりつつある。 このライターの他の記事を見る

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